- ※信の設定が特殊です。
- 女体化・王騎と摎の娘・めちゃ強・将軍ポジション(飛信軍)になってます。
- 一人称や口調は変わらずですが、年齢とかその辺は都合の良いように合わせてます。
- 蒙恬×信/輪虎×信/嫉妬/無理やり/ヤンデレ/All rights reserved.
苦手な方は閲覧をお控え下さい。
抵抗
押さえ込んだ信の両手首が、思っていたよりも細いことに蒙恬は驚いた。こんなにも細い腕で剣を振るい、多くの敵兵を退けているだなんて冗談のようだ。
押し倒された信は、戸惑ったように蒙恬を見上げた。
「…蒙恬、何してんだよ」
重いから退けと言われ、蒙恬は憂いの表情を浮かべる。今から自分に何をされるか、信はまるで想像が出来ていないらしい。
今まで相手にして来た女性だったのなら、顔を真っ赤に染めていたというのに、信のこの反応は少しも自分を異性だと認識していない何よりの証拠だ。
それがどうしようもなく腹立たしくて、蒙恬は奥歯を食い縛る。
信とは幼い頃から交流があった。養子でも、王家という名家の娘だ。父の蒙武は王騎を毛嫌いしているようだったが、子どもの自分たちにはそんなことは関係ない。共に遊んだことだってあった。
両親の背中を追い掛け、幼い頃から将軍を目指していた信は厳しい修行をこなしていた。
以前、信が酒に酔った時に「残党を十人を殺して来い」と王騎に崖から突き落とされたことがあり、それが初めての修行だったと言われた時にはその場にいた誰もが驚いた。
蒙武だってそのような酷な修行を、それも年端もいかぬ我が子に強いたことはない。下手したら修行で命を落とすことだってあっただろう。
幼い頃から王騎の下で厳しい修行を積んで来た信が今、将軍の座に就いているのは、成るべくしてなっていることなのかもしれない。
それでも彼女が女であることには変わりない。現に、今だって自分という男に身体を組み敷かれているのだ。
どれだけの死地を乗り超えて来た強さがあったとしても、彼女が女で、いずれは自分じゃない男にこんな風に手籠めにされてしまう日がくるかもしれない。
(いや…)
蒙恬は、深い傷跡が残っている信の右腕に視線を向けた。
自分が知らないだけで、彼女はもう手籠めにされたのかもしれない。彼女の体に深い傷をつけたあの男によって、女にさせられたのかもしれない。
熱っぽい瞳で語っていたのだから、もしかしたら信は自ら足を開いて輪虎を誘ったのだろうか。
「…蒙恬…?」
黙り込んでしまった蒙恬を、不思議そうに目を丸めて信が見つめている。
その瞳には警戒心など微塵もなかった。男が女を組み敷いている状況だというのに、信にとっては友人の戯れにしか思えないのだろう。
腹の底から燃え盛るような怒りが込み上げて来る。それが嫉妬という感情であることに蒙恬は気づいていたが、どうすることも出来なかった。
「ん、んんッ――!」
気づけば、蒙恬は信の唇に自分の唇を押し付けていた。
過去に褥を共にした女性たちなら喜んで口を開いて舌を絡めてくるのに、信は頑なに口を開けようとしない。ここまであからさまに拒絶をされたのは初めてのことだった。
大きく顔を背けて、なんとか唇を離した信が顔を真っ赤にさせている。
「なっ、にしてっ…」
驚愕のあまり、声が裏返っていた。
ようやく自分を異性として意識してくれたのだろうかと思い、蒙恬の口元に笑みが戻る。
「あはっ、顔真っ赤」
唇を指でなぞると、信があからさまに目を泳がせた。
抵抗 その二
信が動揺していることに気分を良くした蒙恬は、すっかり自分の調子が戻って来たことを察した。
褥の中ではいつも女を導いているように、やはりこちらが優位に立っていないと調子が狂う。
彼女だって所詮は女なのだ。甘い言葉を囁いて効果がないのなら、行動で示してやれば良い。
「…信」
腕から手を放した蒙恬は信の肩を抱いて、名前を囁いた。腕も細かったが、肩も丸くて華奢だった。
「や、めろっ…」
信の両手が蒙恬の胸を突き放そうとするが、少しも力が入っていない。まるで、本当はもっとして欲しいと誘っているようだった。
「やめない」
身を屈めて耳元で低く囁くと、信の体が強張った。ひ、と息を詰まらせたのを見て、蒙恬の口の端が得意気につり上がる。
「耳、弱いの?」
「ばかッ、喋んな」
「やーだ」
吐息が当たってくすぐったいのか、信が大きく身を捩る。
やめろと言われればもっとしたくなるのは男の性だと教えてやらねばならない。蒙恬は信の反応を楽しみながら耳元に息を吹き掛けた。
信の体が強張って、本当に耳が弱いのだと分かると、蒙恬は滑った舌を耳に差し込んだ。
「やぁッ」
抱いている肩にまで、信が鳥肌を立てたのが分かった。
蒙家の嫡男である自分に気に入られようと、一つ一つの愛撫に大袈裟なまでに声を上げて身を捩り、演技をする女も過去にはいたが、鳥肌を立てるのは自分の意志で出来るものではない。
息を弾ませている信に気を良くし、彼女の着物の裾に手をかけた。左右に割開くと男物の下袴が現れる。
他の女ならば着物の裾を開けば、白い脚を曝け出してくれるというのに、信に限っては本当に焦らしてくれる。
「やめろッ!」
下袴を引き下げようと手を掛けると、憤怒した信が咄嗟に手を振りかぶった。
「うッ」
乾いた音が鼓膜を揺さぶった直後、蒙恬の左頬に鈍い痛みが走った。
「あ…」
信がばつの悪い顔をして何か言葉を探しているのが分かった。
打たれた頬に手をやると、僅かに熱が籠っている。拳で殴られなかっただけ良かったと思いながら、蒙恬の口元には笑みが浮かんでいた。
過去に相手にしていた生娘でさえも甘い言葉を囁けば、自分から足を開いたというのに、ここまで警戒心が固いと、力で捻じ伏せてみたくなる。
普段経験している甘い情事の時に味わえるものとは違った興奮に、下腹部がずんと重くなった。
目の前にいる餌を逃がすまいとする獣のような、こんなにも凶暴な一面が自分にもあったのかと蒙恬は驚いた。
抵抗 その三
「ど、どけよっ…!もう帰る…!」
狼狽えながらも、信は蒙恬の下から逃げ出そうと身を捩った。
蒙恬は無言で立ち上がって、信を解放する。素直に解放されたことに戸惑いながらも、信は何とか立ち上がって扉の方へ向かう。その背中を蒙恬は追い掛けた。
「おい、放せってッ!」
背後から抱き込まれるようにして、扉と蒙恬に身体を挟まれた信は体を強張らせた。向き合う体勢よりも、この方がこちらも都合が良い。
信の表情が見れないのは残念だと思いながら、手を伸ばして信の胸を揉みしだく。いつも着物に包まれている膨らみは、男の手の平におさまる良い大きさだった。布越しでも、ふっくらと弾力のある胸だと分かる。
「蒙恬、やめろッ」
悪戯をする手を押さえ込みながら、肩越しに信が蒙恬を睨み付ける。蒙恬は楽しそうに目を細めると、声を荒げる彼女の耳元に唇を寄せた。
「…良いの?そんなに叫んだら誰か来ちゃうよ?」
わざと小声で、吐息を吹き掛けるように話すと、信がぐっと奥歯を噛み締めたのが分かった。
「俺はやめるつもりないけどね。信がその気なら、みんなに見られながら続けようか?」
「~~~ッ!」
少しも冗談に聞こえない蒙恬の声色に、信の顔から血の気が引く。よく周りをからかいはするが、冗談を言わない男なのは信もよく知っていた。
「みんな大喜びだと思うよ。だって信はあの六大将軍二人の娘なんだもの。うちに嫁いでくれるなら蒙家は安泰だって、みんな泣いて喜ぶんじゃないかな?きっとじいちゃんもあの世で喜んでくれると思うな」
「何、言って…」
怯えた瞳を向けられると、蒙恬の背筋がぞくりと痺れる。
彼女のこんな顔を見るのは初めてのことだったし、他の誰でもない自分が彼女を怯えさせているのだと思うと、それだけで男の征服感が満たされていく。
襟合わせの中に手を差し込んで、さらしをずらし、直接胸に触れる。
「ッぅ…」
手の平いっぱいに弾力のある肌を味わいながら、中心にある突起を指で弾くと、信がきゅっと唇を固く引き結んだ。
二本の指で摘まんだり、擦り合わせていると、突起が上向く。
蒙恬は背後から信の耳に熱い吐息を吹き掛けながら、弄りやすくなった突起を指で攻め続けた。
「ッ…、う…」
扉に押し当てていた両手で、信が自らの口に蓋をする。逃げ出したい気持ちはあるようだが、将軍という座に就いている自分のはしたない姿を家臣たちに見られたくないらしい。
大人しくなったことに気を良くして、蒙恬は彼女の項に唇を寄せる。軽く歯を立てながら、胸を弄っていた片方の手を今度は帯に伸ばした。
「う…」
片手で口に蓋をしながらも、信は帯を解こうとする蒙恬の手首を掴んだ。二本の指で胸の突起を強く挟むと、信の手から途端に力が抜ける。その隙をついて帯を解くと襟合わせが大きく開いた。
下袴の中に手を差し込んで、下腹部を伝って指を這わせていくと、信が鼻の奥でくぐもった声を上げた。
「や、め…」
局部に指が辿り着いた途端、信が泣きそうな声を上げた。肩越しにこちらを見つめる黒曜の瞳にもうっすらと涙が浮かんでいる。
大声を出せば従者たちが部屋にやって来るかもしれないという不安のせいで、先ほどのように大声を出せないらしい。
蒙恬が割れ目に沿って指を這わすと、まるで火傷でもしたかのように信の体が大きく跳ねた。
「信、こっち向いて」
胸を弄っていた手で彼女の顎を掴むと、蒙恬は身を屈めて彼女に口づけた。
「んんっ、う…ふぅ…」
薄く開いた口の中に舌を差し込み、信の舌を絡め取る。花襞を掻き分けて、割れ目を擦るように指を動かせば、信が口づけの合間に苦しそうな声を上げた。
「ふっ、…んぅ、くっ…」
しつこいくらいに指を動かしていると、淫華が蜜を零し始める。
粘り気のあるそれが指に纏わりついた感覚に、蒙恬の口の端がつり上がった。やはり信は女なのだと思えた。
求婚
「ふ、ぅう…ぅん…」
口づけをやめた隙に、再び手の甲で蓋をしていた口から熱い吐息が洩れている。背中に覆い被さりながら、蒙恬は猛々しく着物を下から持ち上げている男根を信の身体に押し付けた。
硬くなっている男根の存在を知らしめるように何度か腰を押し付けると、信の体が小刻みに震え始める。
「ね、信もその気になって来た?」
「んんッ…!」
声を出せない代わりに、信は大きく首を横に振る。顔を見なくても彼女が青ざめているのは明らかで、蒙恬は苦笑してしまう。
蜜がどんどん溢れて来て、中で指を動かす度に淫靡な水音が立てる。どれだけ嫌がっていたとしても体は素直だ。
「―――ッ」
指を二本に増やして敏感な中を攻め立てると、信が白い喉を突き出した。
今まで抱いて来た女よりも、蒙恬の指を強く締め付けて来る。
日頃から厳しい鍛錬に励み、馬に跨っているおかげで、下肢の筋力はそこらの女よりあるのだ。男根を咥えさせた時の締め付けは極上の夢を見せてくれるに違いない。
「ぅうッ…!」
信の両足ががくがくと震えている。女の官能をつかさどる箇所を弄っているのだから当然の反応である。ここは女の急所だと言っても良い。
苦しそうに息を弾ませている彼女に、蒙恬はようやく指を引き抜いた。蜜に塗れた指で下袴を掴む。
「…随分濡れちゃったね。気持ち悪いだろうから脱いじゃおうか」
「や、ぁッ」
信の手が蒙恬の手首を押さえるより先に、下袴を下ろした。着物だけが信の上体に引っ掛かっているだけの状態になる。
先ほど帯を解いたため、襟合わせが大きく開いていて、白い肌が覗いている。今からこの体を貪ることが出来るのだと思うと、それだけで男としての性が喜んだ。
「っ…」
震える両足では体を支え切れなかったのか、信はその場にずるずると崩れ落ちてしまう。
「信、大丈夫?」
心配するように声を掛け、蒙恬は彼女の肩に手をやった。
「や…!」
力の入っていない手で振り払われる。
触るなという意志表示だというのは蒙恬も分かっていたが、構わずに彼女の背中と膝裏に手を回した。
「蒙恬ッ…?」
急に体を抱き上げられた浮遊感に信が驚き、黒曜の双眸が不安の色で染まる。
落とされないよう、信の両手が蒙恬の着物を弱々しく掴んだ。先ほどは触るなと手を振り払って来たというのに、まるで甘えるようなその態度に愛おしさが込み上げる。
応接間に敷かれている獣の毛皮を剥いで作られた柔らかい敷布の上に寝かせ、彼女の体を組み敷いた。
先ほどまで苦しそうに喘いでいた顔は今は青ざめていた。何か言おうと唇を戦慄かせていたが、蒙恬は構わずに自分の着物の帯を解く。
お互いに肌を曝け出すと、素肌で触れ合える喜びが増した。
幾度も死地を駆け抜けて来た信の体は傷だらけだったが、彼女の生きた証でもある。
小さな傷から致命傷になった深い傷まで、たくさんの傷痕が刻まれた肌を眺めた後、蒙恬はにこりと微笑んだ。
「…信、好きだよ」
真っ直ぐに彼女の目を見据えながら想いを告げると、不安の色に染まっていた信の瞳が瞠目する。
「もう戦なんか出ないでいい。俺のお嫁さんになってよ」
「っ……」
信は力なく首を横に振っていたが、先ほどのようにもう抵抗する気力がなくなっているらしい。
返事が否であっても、彼女の心がここになくても、事実さえあれば良いと蒙恬は淀んだ心で考えた。
「信は優しいからさ、弱い人たちには手を出さないでしょ。…自分の子どもなら尚更だよね」
「―――ッ」
蒙恬が何を企んでいるのかを理解した信が声を喉に詰まらせて、目を見開いた。
身を捩って逃げようとする彼女の身体を押さえ込み、蒙恬があははと笑う。
秦王への強い志を持っている彼女が、弱い命を無下にすることが出来ないのは蒙恬も分かっていた。それを逆手に取れば良いだけの話だ。
「ねえ、俺の子を孕んでよ。そうしたら信もお嫁さんになってくれるでしょ?まさか優しい信が堕胎なんて出来る訳ないよね」
その言葉は蒙恬にとって求婚、そして信にとっては、将としての死刑宣告に等しいものだった。
求婚 その二
いよいよ瞳から涙を流した信が悲鳴に近い声を上げる。
「いやだッ、俺はっ…」
情けないほどに震えている声で信は蒙恬の下から逃げようとした。早く諦めてしまえばいいのにと思うのだが、どんな状況でも決して屈さないのが彼女の長所であることを蒙恬は思い出した。
もしも、両想いだったなら、今頃はお互いに唇を重ね合って、嬉し涙でも流していたかもしれない。
「輪虎を、裏切りたくない」
しかし、信の口から洩れたのは拒絶の言葉どころか、蒙恬ではない男の名前だった。
今にも消え入りそうな弱々しい声だったが、蒙恬の胸を悪くさせるには十分過ぎるほどだった。
「―――…輪虎は死んだんだよッ!お前がその手で殺したんだろッ!」
頭に血が昇り、蒙恬が声を荒げる。信が目を見開いた。
「あんなやつじゃなくて、俺を見ろよ!」
叫ぶように言った途端、蒙恬の左頬に焼けるような痛みが走った。
視界が大きく揺れ、何が起こったのか分からずにいると、鼻から何かが伝う。反射的に手の甲で拭うとそれは血だった。
信に殴られたのだと理解するまでに、やや時間が掛かった。
見下ろすと、信が涙を流しながら、歯を食い縛って蒙恬のことを睨み付けていた。青ざめていた顔は真っ赤になっており、憤怒の表情で、肩で息をしている。
未だ彼女の心の中に、輪虎の存在が深く根付いていることを理解した。信が輪虎を好いているのは分かっていたが、やはり異性として輪虎を意識していたのだ。
「なんで…?」
蒙恬は口の中に広がる鉄の味を噛み締めながら、静かに信に問い掛けた。
信は涙を流しながら蒙恬を見据えるばかりで、何も言わない。蒙恬を思い切り殴りつけた右手の甲が赤く腫れている。
「輪虎より、俺の方が、ずっと一緒にいただろ…」
幼い頃の思い出が、走馬燈のように蒙恬の脳裏に流れていた。
養子として王家に迎え入れられた信と初めて出会ったのは、咸陽宮だ。その頃の信は既に大将軍というものが何たるかを知っていて、王騎と摎のように強くなるのだと語っていた。
初めは男だと思っていたのに、信が女だと知ったのは初陣を済ませた頃だったと思う。
初陣で大いに活躍した信を誇らしげに思っていたのだが、名前よりも先に王騎の娘という呼称を聞いた蒙恬は愕然としたものだった。
しかし、信はこれまで通り蒙恬と接してくれたし、蒙恬も変に性別を意識することなく、共に将軍の座を目指す戦友として切磋琢磨し合う関係になっていた。
一つ一つの戦で大いに武功を挙げた信は、若い年齢ながらに将軍へと昇格したのだが、そのことを鼻にかけることなく、蒙恬とはこれまで通りに接してくれた。
将軍の座に就くため、ずっと信の背中を追い掛けていたが、彼女がこちらを振り返ることはなかった。
自分は信の背中をいつも追っていたけれど、信は違うものに視線を向けていたのだ。輪虎と肩を並べていたことにも、彼に女としての顔を見せたのも、蒙恬は何も知らなかった。
「俺…俺の方が、ずっと信のことを想ってる…」
輪虎はもういないけれど、今も信の心を捕らえて離さないのだ。悔恨の気持ちが胸に広がっていき、蒙恬は奥歯を噛み締める。
名家の繁栄
降り始めた雨のように、蒙恬の涙が顔に落ちる。
「蒙恬…?」
輪虎のことで憤怒していた信が、ようやく落ち着きを取り戻したように見えた。
俯いて顔に掛かった前髪で表情を隠し、蒙恬は溜息を吐く。前髪を掻き上げた蒙恬の瞳は、涙を流したせいで赤くなっていたけれど、少しも感情が浮かんでなかった。
「…もう、いいよ」
全てを諦めたかのような、気怠げな表情を浮かべた蒙恬は信の右腕を持ち上げると、深い傷痕が残っているそこに思い切り歯を突き立てた。
「ううっ!」
痛みに信が顔を引き攣らせる。噛まれた右腕から血が滲んだのが分かった。このまま噛み千切るつもりなのだろうかと信は恐ろしくなる。
「…俺のこと好きになるのは、お嫁さんになった後で良いから」
「はっ?…え…?」
その言葉を聞いた信が呆けたような表情になる。
なぜ結婚することを前提とした言葉なのか、信が蒙恬の言葉の意味を理解するまで、そう時間はかからなかった。逃げようとした彼女の体を蒙恬は無理やり押さえつける。
先ほど解いた自分の腰帯を使って彼女の両手首を拘束すると、信がやめろと叫んだ。
悲鳴を聞きつけて家臣たちが来るかもしれないが、蒙恬は構わなかった。
王騎の娘である彼女が蒙家の嫡男の子を孕むのを、誰が嫌悪するというのか。忠誠心の厚い家臣たちが蒙家の繁栄を願わない訳がない。
結婚相手を見極めているという名目で、色んな女と遊んでいる嫡男様がようやく身を固めてくれたのだと歓喜するだろう。
凌辱を強いる行為だとしても、蒙家の繁栄のためならば誰も文句は言うまい。
「や、やだっ、やめ、て、くれっ」
先ほど指で解し、蜜を溢れさせていた淫華に男根の切先を押し当てると、信が青ざめながら懇願した。
褥の中で、こんな風に女が涙を流すのは随分と征服感が満たされて心地良いものである。どうして今まで知らなかったのだろう。蒙恬は自分の唇をべろりと舐めた。
「ぃやだあぁっ」
腰を押し進めていくと、信が喉を反らしながら拒絶の声を上げた。しかし、下の口は喜んで男根を咥えている。
「あー…気持ち良い」
指を入れた時から狭いのは分かっていたが、まるで食い千切られるように締め付けて来て、全身が総毛立った。
気を抜けば身体の力が抜けてしまいそうなほど、蕩けるような快感が男根から伝わって来る。今まで抱いて来たどんな女よりも具合が良い。
挿入しただけでこんなにも男に生まれて来た喜びを実感出来るなんて、もしかしたらお互いに身体の相性が良いのかもしれない。
「やだあっ、抜けよッ」
帯で一括りに拘束された両腕で蒙恬の胸を突き放そうとする。
拒絶の声を上げているが、痛がっている様子はない。身体の相性が良いと信も感じているのなら、これから淫らな声を上げてくれることだろう。
生娘と違って痛みに打ち震える様子がないことから、信は既に破瓜を輪虎に捧げたのだと分かった。
そのことに蒙恬は無性に怒りを覚えたが、信はこれから自分の妻として蒙家に迎えられるのだ。輪虎が彼女の破瓜を奪ったとしても、彼女の傍にいることは出来ない。
淫華に自分の男根が突き刺さっているのを見下ろして、今の自分が信を串刺しにしているのだと思った。
膝裏を抱えながら男根を小刻み抜き差しすると、信が泣きながら首を横に振った。
「いや、だッ、やめろッ、蒙恬っ」
「あはっ、可愛いよ、信」
涙で濡れた瞳と視線を絡め合いながら、蒙恬は腰を律動を続ける。
腕の中で信の身体が大きく仰け反った。僅かに震えているのを見ると、ちゃんと女としての快感を感じていることが分かる。もちろん快感を得ているのは信だけではなく、蒙恬もだった。
「んぅううッ」
日頃の鍛錬で美しく引き締まった信の両足を肩に担ぎ、体を屈曲させて腰を前に押し出すと、信が呻き声を上げた。
「っ…!」
前傾姿勢になって根元まで入った男根がさらに締め付けられ、蒙恬は奥歯を食い縛る。深く結合し、あれほど恋い焦がれていた女とようやく一つになったのだと実感出来た。
「ぅああッ、やだあぁッ」
最奥を突くと、信が子どものように泣き声を上げて濡れ羽色の髪を振り乱した。柔らかい肉壁が先端にぶつかり、それが女にしかない臓器だと分かる。ここに自分たちの子が宿るのだと思うと、愛しさが込み上げた。
何度も突き上げていくと、信が悲鳴に近い声を上げながら、肢体をびくびくと跳ねさせる。
男根を咥えている淫華が痙攣していき、子種を求めて射精を促すような締め付けに、蒙恬が胸底でほくそ笑んだ。
「…あー、もう、出ちゃいそう」
耳元で独り言を囁くと、信が涙で濡れた瞳で蒙恬を見据える。
「蒙恬ッ、まっ、待って、たの、頼むから」
この期に及んでまだやめてもらえると思っているのだろうか。
邪魔な理性さえ奪い取れば、きっと信は喜悦の声を上げるだろう。いずれその日が来ることを心待ちにして、蒙恬はさっさと自分の妻にしてしまおうと考えた。
「そんな目でお願いされたら、もっとしてあげたくなっちゃう」
帯で拘束された両腕しっかりと掴んで、激しく腰を打ち付けた。繋がっている部位から鳴り響く肉の打擲音が行為の激しさを物語っている。
「はあっ…」
目が眩んでしまいそうなほど快感に包み込まれる。それはどうやら信も同じようで、決して嫌悪だけじゃない声をひっきりなしに上げていた。
「んぅッ、ううぅん」
開いた口に唇を重ねて舌を差し込む。舌を絡ませたり、吸い付くと、口づけの合間に信が鼻奥で呻いていた。
悲鳴さえも逃したくないと、蒙恬は信の体を強く抱き締める。両腕で細い体を抱き押さえながら律動を送ると、恋人同士のような気分になれた。
「待、て…何でも、する…から…」
だからやめてくれと泣きながら訴える彼女に、蒙恬はすっかり気を良くした。せっかく寛大な約束を取り付けてくれたのだから、利用しない手はない。
「それじゃあ」
腰を止めて、自分の口元に手を当てた蒙恬は信の細腰を抱え直した。
仰向けに寝転び、結合したまま信の身体を自分の上に座らせる。跨るような形になった信は戸惑ったように蒙恬を見下ろした。
着物が引っ掛かっているだけの姿で、ほぼ裸体同然である信の身体を見上げ、蒙恬は絶景の眺めだと笑った。
いつもなら着物と鎧で覆われている体は傷だらけではあるが、女性らしい線をしっかり描いており、腰のくびれも胸のふくらみも妖艶的だ。
「自分で動いてみせて?」
指示をすると、信が狼狽えた。羞恥心で動けないというよりは、どうしたら良いのか分からないといった顔だ。
もしかしたらこの体位で情事をしたことはないのかもしれない。破瓜を奪えなかったことは腹立たしいが、他の初めてなら何だって欲しい。
「ほら、ゆっくりでいいから」
彼女の細腰を掴んで前後に揺らすと、信が顔を歪めた。
「ぁううっ」
深く身を繋げているとはいえ、身体の均衡が崩れてしまいそうになり、前のめりになった信は咄嗟に蒙恬の顔の横に拘束された両手をつく。
「ほら、頑張って。何でもしてくれるんでしょ?」
騎乗位というのは女が主導権を握る体位である。蒙恬が腰から手を放すと、信はぎこちなく腰を前後に揺らす。
経験がないせいで緩慢な動きだったが、恋い焦がれた女が自分に跨って腰を振っているのだと思えば、それだけで興奮した。
名家の繁栄 その二
床に手を突きながら懸命に腰を揺らす信を見上げながら、蒙恬は快感と優越感に浸っていた。
腰を動かす度に揺れる柔らかい胸を掴むと、信の顔がさらに強張る。
両手で胸を揉みしだきながら、固くなっている突起を指の腹で擦ってやると、信は強く目を瞑ってしまう。
「う、ふぅ…」
もしかしたら胸を弄られるのが好きなのだろうかと思い、蒙恬は彼女の背中に腕を回して、前傾姿勢を取らせた。
「や、ぁッ」
眼前にやって来た胸を口で食み、敏感な突起を舌で転がる。信が驚いて目を開き、蒙恬の顔を離そうと髪を掴んだ。
その手にはあまり力が入っていなかったが、頭皮が引っ張られる痛みに苛立った蒙恬は突起を上下の歯でぎりぎりと挟む。
「ひっ、ぃ…!」
痛みに信が泣きそうな声を上げる。主導権は渡したはすなのに、信の弱々しい姿に先ほどから興奮が止まない。もっと泣かせてみたいという汚い欲さえ溢れて来た。
「ほら、信が頑張って動かないと、ずうっとこのままだよ?」
脅しのようにそう囁けば、信はぐすぐすと鼻を鳴らしながら、先ほど教えられたように腰を前後に動かす。
仕方なく従ってやっているという態度があからさまで、蒙恬は苦笑した。
いずれは渡した主導権を存分に使って、性の獣に成り果てた彼女を見られる日が来るだろうか。
胸の突起を弄りながら、反対の手で蒙恬は自分の男根を咥え込んでいる其処に手を伸ばした。
花襞を大きく捲り、蜜を零す淫華を自分に男根が串刺しにしている淫靡な光景がそこにあった。
「手伝ってあげる」
蒙恬は手を伸ばすと、ぷっくりと膨れ上がっている花芯に指を這わせた。
「ひっ…!」
まるで術でも掛けられたかのように、信の身体が硬直する。女の官能をつかさどる一番の急所でもあるのだ。ここを弄られて泣かない女は存在しないだろう。
「や、やっ…ゃあッ」
首を振った信が身体から降りようとしたので、蒙恬は床に手をついて体を起こした。
「んあッ」
蒙恬に身体を抱き締められて、信は逃走に失敗したことを悟ったようだった。胡坐をかいて座った蒙恬の上に身体を落としてやると、密着度が増す。男根に中を抉られたことで信の身体が仰け反った。
「何でもしてくれるんじゃなかったの?嘘吐いたんだ?」
「そ、それ、はっ…ぁあッ」
言い訳を並べようとした信の言葉が途切れる。片手で信の背中を抱き押えながら、再び花芯を弄ると、何が起きているのか分からないと言った顔を浮かべていた。
腰の震えが止まらなくなっていて、男根がきゅうきゅうと締め付けられる。口では何を言おうが、体が喜んでいるのは一目瞭然である。
彼女の首筋に顔を埋めながら、蒙恬は律動を送った。
密着度を利用して、男根を深く埋めたまま先端で擦り付けるように最奥を攻め立てると、信が幼子のように首を振って泣き喚く。
拘束された両腕で蒙恬の胸を突き放そうとするのだが、繋がっている楔は深く、簡単には外れそうにない。これも身体の相性が良いからなのだろうと蒙恬は考えた。
息を荒くしながら、蒙恬は信の髪を掴んで無理やり唇を重ねた。
女性を乱暴に扱うことはないと自負していたのだが、信に限ってはいつも胸底に押さえつけていた狂暴な獣が暴れ回ってしまう。
逃げ惑う舌に吸い付き、絡ませると、苦しそうな吐息が洩れる。それにさえ欲情が止まなかった。
「ん、んんぅッ…!」
内側で膨らんだ大きな欲望が爆発を起こしたかのような衝撃を覚える。畳み掛けるように子種が尿道を駆けていくのが分かった。
射精の瞬間は、いつだって腰が砕けてしまいそうな甘い痺れが走る。
「~~~ッ!!」
最奥で射精されていることを感じたのか、くぐもった声の悲鳴を上げながら、腕の中で信の身体が暴れる。しかし、蒙恬は吐精を終えるまで、唇を重ねたまま彼女の身体を抱き押さえていた。
「ん…ぅ…」
吐精を終えて、ようやく唇を離すと、信が虚ろな瞳で涙を流しているのが分かった。
汗で張り付いた前髪を指で払ってやり、額に唇を落とす。
力なく落ちた信の右腕を持ち上げ、蒙恬は一番深い傷跡にゆっくりと歯を立てる。
いずれはこの傷跡と一緒に、あの邪魔な男の記憶も消し去らなくては。そのためには新しい記憶で上書きをしていくしかない。
自分という夫の存在と、可愛い子どもの存在が、彼女の中から不要な記憶を消していくだろう。
幸せな記憶で全てを埋めていけばきっと、信は自分だけを見てくれるに違いない。
「…信、これからよろしくね」
明日にでも婚礼の衣装を仕立ててもらおうと考えながら、蒙恬は妻の耳元で優しく囁いた。
終
番外編(輪信回想・恬信後日編)はこちら