キングダム

エタニティ(王賁×信←王翦)番外編

キングダム エタニティ3 王賁 信 賁信
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  • ※信の設定が特殊です。
  • 女体化・王騎と摎の娘・めちゃ強・将軍ポジション(飛信軍)になってます。
  • 一人称や口調は変わらずですが、年齢とかその辺は都合の良いように合わせてます。
  • 王賁×信/王翦×信/甘々/嫉妬深い/ツンデレ/ハッピーエンド/All rights reserved.

苦手な方は閲覧をお控え下さい。

本編はこちら

 

初夜

本編で割愛した賁信の初夜話です。

 

襟合わせを開いて現れた信の白い肌に手が触れる寸前、信が王賁へ声を掛けた。

「そ、その、…俺…今まで、こういうこと、したこと、ないから…」

もごもごと口の中で言葉を揉み砕いている信に、王賁は口の端を僅かにつり上げる。

「貴様がむやみに足を開く女でないことなど知っている」

幾度も死地を駆け、その度に生き抜いて来た傷だらけの肌を見下ろし、王賁は目を細めた。

身を屈めて、首筋にちゅうと吸い付くと、くすぐったい感触に信が顔をしかめる。

「…戦以外、何も知らぬだろう」

「わ、悪かったな…!」

それまで羞恥に顔を染めていた顔に不機嫌な色が差し込んだ。信と同じ年頃の女性ならば、早い者ならもう子を産んでいるし、大抵の者は嫁いでいる。

しかし、大将軍の座に就いている彼女は、いつまでも男に嫁ぐことはせず、かといって、色話も聞かれない。

縁談の話が来ているのは知っていたが、それをことごとく断り、信は克己して秦のために戦っているのだ。

だから王賁は、信が男とそういうことをした経験がないことを、何となくだが察していたのだ。

王賁だけじゃなく、恐らく彼女を知っている者なら大半は気付いているだろう。それもあって縁談の話が途切れないのかもしれない。

そんな彼女が、他の誰のものでもなく、自分だけのものになるのだと思うと、王賁は優越感に胸を躍らせた。

信の体を寝台の上に横たえながら、王賁が耳元に唇を寄せる。

「力を抜いていろ」

優しい声色で指示を出すが、信は小さく首を横に振った。強張った身体は小刻みに震えたままである。

「ぅ……だ、って…緊張、して…」

真っ赤な顔でそう打ち明ける彼女に、王賁は愛おしさが込み上げた。口づけた時から既に危機感を覚えていたが、これ以上煽られると余裕も理性も完全に失われてしまう。

信にとっては初夜になるのだから、乱暴にして、この行為が恐ろしいものだと記憶に刻むことだけは何としても避けなくてはならないと思った。

「信」

王賁は着物を掴んでいる彼女の手をそっと掴んだ。

顔は真っ赤になっているが、緊張のせいで、彼女の手は随分と冷えていた。掴んだ手首を優しく導き、王賁は彼女の手を自分の胸に当てさせる。

「あ…」

とくとくと王賁の心臓が早鐘を打っているのが手の平から伝わり、信は些か呆気にとられたような顔になった。

「…分かるか?」

緊張しているのは自分だけじゃないのだと気付き、信が瞠目している。

「…う、ん」

優しく囁くと、信は僅かに身体から力を抜いたようだった。再び唇が重なり合うと、信は口づけを受け入れるように目を伏せる。長い睫毛が微かに震えていた。

唇を交えながら、王賁は信の体を抱き締めた。帯が解かれ、引っ掛けていただけの着物を脱がすと、傷だらけの肌が露わになる。

とても女性が持つ玉の肌とは言い難いものだったが、王賁には美しく見えた。彼女が幾度も死地を駆け抜けて来た証であり、勲章なのだから、醜いはずがない。

女性らしいくびれも胸の膨らみも悩ましく、王賁の下腹部がずんと重くなる。

幼い頃から王家としての付き合いがあり、幼馴染として付き合って来た彼女だったが、鎧の下では、こんなにも女の体に成長していたのかと驚いた。

初陣を済ませてから、あっと言う間に大将軍の座に上り詰めた信の後ろ姿ばかりを見て来たせいだろう。

いつの間にか、信のことを幼馴染の女性である前に、将軍という位置づけをしてしまっていたのだ。

鎧と着物を脱いだ今、紛れもなく信は女性だった。そして紛れもなく彼女を自分だけのものにしたいと思っている自分を、王賁は改めて自覚した。

 

初夜 その二

唇を交えながら、王賁の手が信の肌の上を這う。いつもは着物と鎧で覆われている腰のくびれは、女性特有の曲線を兼ね備えていた。

「ふ…ぁ…」

くすぐったいのか、口づけの合間に信が小さな声を上げる。先ほどよりは少し緊張が解れたような顔をしているが、まだ体は強張っていた。

「んっ…」

隆起している胸を掌で包むと、程良い重さを感じさせた。先端の突起を指の腹でくすぶってやると、信がきゅっと唇を噛んで声を堪える。初めての感覚に戸惑っているのだろう。

「信」

安心させるように名前を呼びながら、耳元に息を吹きかける。柔らかい胸を弄りながら、頬や首筋に口付けていくと、信は少しずつ甘い吐息を洩らすようになっていく。

「ひゃっ」

胸に顔を寄せて先端の突起に舌を這わせると、信が小さな声を上げる。全てが初めての経験で、こんなにも困惑している彼女の姿を見るのは新鮮だった。

「んッ…んう…」

尖らせた舌先でつついたり、舐ったりを繰り返していると、口の中で硬くなっていくのが分かった。

口と手で胸を愛撫を続けていけば、信は鼻息を弾ませ、陶然とした表情を浮かべていた。

「っ…」

その反応に気を良くした王賁が片方の手を下肢へ伸ばす。信が全身を強張らせたのが分かった。

内腿に指を這わせ、猫の毛のような柔らかい下生えを指で掻き分けていくと、淫華に辿り着いた。僅かに蜜を零している。

花びらを指で押し広げると、蜜に塗れた薄紅色の粘膜が露わになる。蜜で濡れ光っている粘膜はまだ男の味を知らない初々しさを残していた。

「あっ…」

ゆっくりと人差し指を差し込むと、信が小さな声を上げる。

破瓜の痛みは男には想像出来ないものだと聞く。苦痛は避けられないとはいえ、なるべく大事に扱ってやりたい。王賁は信と唇を重ねながら、指で中を押し広げるように動かした。

身を屈め、中を指で広げながら、再び胸に吸い付く。

目線に困ったのか、信は両腕で顔を覆っていた。

「顔を隠すな」

「っ…」

咎めるように言うと、信が泣きそうな顔で睨んで来る。言い返す余裕もないのだと分かり、王賁は彼女と唇を重ねた。

「ん、ふ…」

舌を絡め合い、弾む吐息をぶつけ合う。

時間を掛けて指を動かし、中を押し広げていくと、二本目の指も抵抗なく飲み込んだ。

根元まで押し込むと、それ以上の侵入を拒むように柔らかい肉壁にぶつかった。それが子宮だと分かると、王賁は慈しむように指の腹で女性にしかないその臓器を愛撫する。

「ふ、うぅっ…」

信が手の甲で口に蓋をして、溢れ出る悲鳴を堪えている。しかし、表情と声に苦痛の色は混じっていない。

今は指で愛撫しているここを、自分の男根で掻き回したら彼女は一体どんな表情でどんな声を上げるのだろうか。思わず固唾を飲む。

「ぁ、あ…」

内側から蜜がどんどん溢れて来る。

「俺、ばっかり、やだ…」

そろそろ指をもう一本増やそうと思った頃に、信が子どものように駄々を捏ねて王賁の腕を掴んだ。

 

初夜 その三

指を引き抜くと、信が切なげに眉根を寄せる。

「ん…」

それまで自分の淫華を弄っていた王賁の手を両手でそっと包むと、彼女は躊躇うことなく唇を寄せて来た。

興奮のあまり、勃起し切った男根を着物越しにそっと撫でられて、王賁が思わず喉を引き攣らせる。

先ほどまで王賁が彼女の反応を楽しんでいたように、信も小さく笑った。

寝台に手をついて身を起こした信が身を屈めたかと思うと、着物を捲られる。
臍につくくらい反り立った男根を目の当たりにした彼女が赤い舌を覗かせ、妖艶な笑みを浮かべた。

「下手くそでも笑うなよ…」

経験はないはずなのに、色気に満ちたその表情を見て、王賁は思わず生唾を飲み込んだ。

「っ…」

舌が亀頭に触れると、温かい感触がねっとりと沁みた。熱い吐息を洩らした王賁に、信が嬉しそうに目を細める。

慣れていないせいで舌の動きが単調だった。決して上手い口淫ではなかったが、気持ち良くなってもらいたいという健気な態度に、王賁の胸は満たされていく。

「ぅ、んん、っ…」

先走りの粘液が出て来た頃に、信は唇を割り広げて亀頭を咥える。温かくてぬめった感触に敏感な箇所が包まれて、背筋に甘い痺れが走った。

「ふ…ぅ、…」

口の中で舌を動かしながら、信が上目遣いで王賁を見上げる。

上気した頬は桃色に染まっており、潤んだ瞳に見つめられると、それだけで絶頂を迎えてしまいそうになる。腹に力を込め、王賁は迫り来る射精感に耐えていた。

信の頭を撫でて、もういいと男根を口から吐き出させる。名残惜しそうな瞳を向けられたが、王賁にはもう余裕がなかった。

再び信の体を寝台に横たえてやると、彼女の足を大きく広げさせる。先ほど指で慣らしてやったが、本来ならばもう少し時間を掛けて丁寧に扱ってやりたかった。余裕のない男だと思われるだろうか。

「は、やく…挿れろよ」

信も王賁と早く見を繋げたいという想いがあるようで、少し戸惑った表情を浮かべてはいるものの、抵抗はしない。

信の唾液と先走りの液で濡れそぼった男根の切っ先を、淫華に宛がう。

「ぅ…」

緊張に信が身を固めたのが分かる。王賁は信の額や頬に唇を落としながら、なるべく力を抜かせようとした。

「っ、んん…!」

狭い其処を男根が押し広げていくと、信の眉間に苦悶の皺が寄る。

「ぁあああッ」

信の体を抱き締めながら、男根を押し込むと甲高い悲鳴が上がった。堰を切ったかのように彼女の瞳から涙が溢れ出す。しかし、拒絶の声は上げない。

「信ッ…」

口の中よりも温かくて柔らかい粘膜に男根が痛いくらいに吸い付かれ、王賁はあまりの快楽に奥歯を強く食い縛る。

痛みに打ち震える体を抱き締め直すと、互いの肌がしっとり汗ばんでいるのが分かった。

半分ほど男根が彼女の中に埋まると、快楽に飲み込まれそうになったが、王賁は彼女の痛がる姿を見て、必死に理性をつなぎ止めていた。

「…抜くか?」

「ぃや、だ…」

素直に頷いてくれたのなら、王賁も理性に従えただろう。しかし、信は首を横に振って、王賁の首に両腕を回して抱きついて来る。虚勢を張っているのはすぐに分かった。

大丈夫だから続けてくれという信の意志表示だと分かり、王賁は彼女の体を強く抱き締めながら、男根を根元まで進めたのだった。

隙間なく下腹部が密着した頃には、信の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。

「愛している」

破瓜の痛みに打ち震える彼女の耳元でそう囁くと、信は王賁の体に回した腕に力を込めた。

「お、れも…」

泣きながら、痛みに堪えながら、ぎこちない笑みを浮かべた信に、王賁は思わず唇を重ねていた。

敷布の上で指と指を交差させ、唇を交えていると、信の表情が僅かに和らいだ。

それまで苦悶の表情を浮かべていた信だったが、ぐすぐすと鼻を啜って王賁のことを見つめている。

「…動くぞ」

信が小さく頷いたのを確認してから、王賁はゆっくりと腰を引いた。男根に吸い付いていた温かな肉壁が擦られ、信も王賁も切なげに眉を寄せている。

半分ほど引き抜くと、蜜と処女膜が破れた血で塗れた自分の男根が、まるで凶器のように淫華の割れ目に突き刺さっているのが見えた。この女の処女を奪ったのが自分だという実感で、胸がいっぱいになる。

「あううッ」

再び根元まで男根を押し込むと、信が苦しげな声を上げた。

まだ破瓜の痛みの余韻があるだろうに、心の中で謝罪をしながら、王賁は律動を始めていく。とっくに余裕など消え去っていた。
潤んでいる中が擦れて、信の艶やかな悲鳴と共に、肉が擦れる音と卑猥な水音が響いた。

「賁…王賁ッ…!」

信は痛がる様子はあっても、決して拒絶の声は上げない。代わりに、名前を呼びながら重ね合わせた手を強く握り締められる。

「くッ…信…」

この女は自分だけのものだという独占欲と共に、体の底から込み上げて来る情欲が膨らんでいく。

夢中になって腰を揺すり、唇を重ね合い、名前を呼び合い、愛を囁き合った。

「ッ…!」

最奥に男根の先端を押し当てて、射精する。どくどくと脈を打ちながら子種が迸る熱い感覚を確かに感じていた。

最後の一滴を吐精し終えても、二人は抱き締め合ったまま動かなかった。

―――やがて、互いの息が整った頃に、真っ赤に泣き腫らした瞳を擦りながら、信が小さく笑った。

「…戦で受ける傷とは、比べものにならねえな」

王賁が思わず苦笑する。まさか褥で戦の話になるとは思わなかった。

戦で幾度も致命傷受けたことがある信だが、その彼女が涙を見せるくらいなのだから、破瓜の痛みは相当辛かったに違いない。

「…無理をさせたな」

汗で額に張り付いた前髪を指で梳いてやりながら、王賁が呟いた。信が首を横に振る。大丈夫の言葉の代わりに、信が王賁の鼻頭に唇をちゅ、と寄せた。

「………」

そんな可愛らしい返事をされるとは思わず、王賁が思考が一瞬だけ停止する。しかし、未だ彼女の中に埋まっている男根は随分と素直だった。

「なっ、ぁえ、えッ?お、お前ッ…!?」

吐精の後に元の大きさになっていたはずの男根が再び硬くなったのを感じる。敏感になっていた肉壁が甘い刺激を感じ取り、信は戸惑ったように王賁を見上げた。

「…貴様が誘ったんだろうが。もう一度付き合ってもらうぞ」

「はッ!?な、なんでそうなるッ…!?」

信の抗議は王賁の唇によって遮られ、次に彼女の唇から洩れたのは、艶やかな声だった。

 

 

王翦からの申し出

本編で割愛した論功行賞時の王翦×信です。

 

王賁の将軍昇格が決まったのは、戦の勝利が確定する前のことだった。

伝令から戦況を聞いていたが、多くの武功を挙げた王賁の活躍が戦況を傾けたと言っても過言ではない。

此度の戦には出陣していなかった信は、人伝いにその話を聞き、自分のことのように王賁の将軍昇格を喜んだ。

論功行賞の後に行われる宴で盛大に祝ってやろうと思っていたのだが、彼女の住まう屋敷にある男が訪れたことで、その計画は中断せざるを得なかった。

「…王翦が?」

来客の報せを持って来た兵に、信は怪訝な表情を浮かべる。

せっかく宴に行く準備として、普段着慣れない華やかな着物を纏ったところだったのだが、追い返す訳にもいかなかった。

王賁の父である王翦は、信と同じ六大将軍の一人だ。

信は養子ではあるが、王家の人間だ。王賁と幼馴染であり、彼の屋敷にも出入りしていたことがあったため、王翦ともそれなりに付き合いが長い。

そんな彼が自ら訪ねて来たことなど、過去に一度もなかったため、一体何の用だろうと考える。

息子の将軍昇格についてではないことだけは分かる。彼は王賁の父親でありながら、一切の私情を挟まない冷酷な男だった。

その冷酷さを持っているからこそ、戦でも感情に左右されることなく、冷静な判断が出来るのかもしれない。

少しも用件が予想出来ないまま、信は王翦を出迎えた。

今日は武具を解いており、身軽い恰好をしていたが、黒い仮面だけは外していなかった。王翦の素顔を見たことは一度もない。

「…用件って何だよ」

来客用の部屋に通すと、信は椅子に腰掛けながら彼に用件を尋ねた。

「縁談の申し出だ」

「ふーん……誰のだよ」

侍女が淹れてくれた茶を啜りながら返すと、王翦は仮面の下で微塵も表情を変えずに信を見つめる。

「私から王騎の娘お前へだ」

鼓膜を揺すったその声が、脳に届いて理解するまで、しばらく時間がかかった。

口に含んだ茶を静かに嚥下してから、信は聞き間違いかと思って王翦を見る。

「…はっ?今なんつった?」

「私から王騎の娘お前へだ」

瞬きを繰り返しながら聞き返すと、王翦は微塵も表情を変えずに同じ言葉を繰り返す。

信の思考が停止し、彼女はぽかんと口を開けていた。

「……縁談の申し出?…お前が?俺に?」

「そうだ」

躊躇いもなく頷いた王翦を見て、信は謎の頭痛に襲われる。

こめかみに手を当てながら、どうしてこんな話になっているのだろうと信は唸り声を上げた。

もしかしたら自分が知らないだけで、最近になって縁談という言葉の意味がすり替わったのかもしれない。

きっとそうに違いないと思い、信は王翦を見た。

「あー、っと…俺の知る限り…縁談ってのは、結婚の申し出ってことになってるが…いつから意味が変わった?」

「何も変わっておらん」

両腕を組んだ状態で信は閉眼した。全く思考が追い付かない。

「結婚?俺とお前が?」

「そうだ」

何故だ。率直に信はそう思った。

 

王翦からの申し出 その二

王翦には妻がいた。王賁の母親に当たる女性である。出産の時に亡くなったのだと信は王賁から聞いていた。

その後、王翦が別の女性を娶らずにいた理由までは知らなかったが、大将軍である彼の立場ならば、喜んで妻になるという女性など多くいるだろう。

自分に白羽の矢が立ったことを理解出来ず、信は閉眼したまま動けずにいた。

「…………」

「…………」

やがて、息をするのも苦しいほどの重い沈黙に耐え切れず、信は勢いよく立ち上がった。

「いや!おかしいだろッ!」

「何がだ」

王翦が何を考えているのか少しも分からないように、王翦も信の言葉を理解出来ないでいるようだった。

「な、なんで俺がお前と結婚しなくちゃならねえんだよッ!?」

「強要はしていない」

とことん冷静な王翦に、信は自分の調子が狂わされていくのを感じた。謎の頭痛は悪化する一方で、こめかみを押さえる。

仮面越しにじっと目を見据えられると、信は思わず背けてしまった。どうもこの男は昔から苦手である。

何を考えているのか分からないというのもあるが、その鋭い眼差しに全てを見透かされているような気がして、見つめられると居心地が悪くて堪らない。

「…理由は?」

信は目を背けたまま、王翦に尋ねた。

「私がそなたを欲しいと思ったからだ」

とても心地よく響く低い声だった。王翦に想いを寄せる女性であったのなら、喜んで縁談の申し入れを受け入れていたに違いない。

しかし、信は違う。

「お断りだ。なんで俺が王賁の義母にならなきゃいけねーんだよ」

声に怒気を含ませながら拒絶すると、王翦が小さく首を傾げた。

「私の妻になれと言っている。母になれとは言っておらぬ」

「同じだろ」

王翦と結婚するということは、彼の息子である王賁の母になることと同じである。

幼馴染である王賁に母と呼ばれる日が来るだなんて思いもしなかったし、絶対に嫌だった。

もしも、王翦と王賁が親子関係でなかったとしても、この縁談の申し入れを信が受け入れることはない。

「とにかく、お断りだ。別に俺じゃなくても女なんて山ほどいるだろ」

このままでは宴に遅れてしまう。王賁に将軍昇格のお祝いをしたいのに、これ以上時間を取られる訳にはいかなかった。

部屋を出ようとすると、王翦に腕を掴まれて、信はなんだよと振り返る。

「倅に飽きたのなら、いつでも私の下に来るがいい」

「はあっ?」

訳が分からないと睨み返すと、仮面の下で王翦の瞳が楽しそうに細まった。

こいつも笑うことがあるのかと驚いていると、掴まれた腕ごと体を抱き寄せられたので、ぎょっと目を見張る。

「―――」

唇が触れ合う寸前まで顔が近づいたので、信は思わず息を詰まらせる。

…結局、唇が重なることはなく、王翦は満足したように信のことを解放した。

「ではな」

立ち上がった王翦は颯爽と部屋を出ていく。

顔を寄せられたのは突然のことだったとはいえ、心臓が激しく脈打っている。信は顔を真っ赤にして、王翦の背中を睨み付けていた。

(…今日は王賁に合わせる顔がねえな…)

その場にずるずると座り込み、信は重い溜息を吐き出す。

本当なら将軍昇格を祝ってやりたかったのだが、彼の父に当たる男から縁談を申し込まれたなんて、一体どんな顔で話せば良いのだろう。

「はあ…」

祝いの席で言うべき内容じゃないと分かっていても、隠しごとは出来ない性格であることは自分自身が一番よく分かっていた。

 

 

後日編

本編の後日編です。

 

褥の中で、着物の上からでも膨らみが分かる腹を撫でる夫に、信はつい笑みを零した。

「辛くはないか?」

頷いて、信は王賁の背中に腕を回す。

今は王賁の屋敷で過ごしている信だが、臨月に入る前には咸陽宮に身柄を移すことになっている。

妊娠が発覚した時に、親友である嬴政が医師団の手配を約束してくれたのだ。

出産するまで油断は出来ないとはいえ、ここのところは体調も変わりなく過ごせていた。

身の回りの世話をしてくれる者たちも優しいし、いつも気を遣ってくれる。

唯一不満があるとすれば、身重の体では馬に乗れないことと、鍛錬も許されないことである。

ここのところ剣を振るっていないせいか、信は筋力が落ちて来た自覚があった。出産を終えてから、再び大将軍の座に就けるだろうかと不安になってしまう。

「どうした?」

憂いの表情を浮かべている妻に、王賁が小首を傾げる。

「んん…」

信は自分の腹を撫でながら、言葉を濁らせた。

「このままじゃ、剣の使い方も馬の乗り方も忘れちまいそうだなって思って…」

「…大王様の許可を得た上で、寝台に縛り付けるぞ」

少しも冗談に聞こえない言葉に、信の顔が強張った。

信の華奢な肩を包み込むように抱き寄せると、王賁が切なげに眉根を寄せる。

「そんなに、俺や他の将たちは頼りないか?」

「え?」

王賁の質問の意味が分からず、信は目を丸めた。

「飛信軍を率いていたお前の強さは、確かに誰もが認めている。無論、俺もだ」

「………」

「だが、お前の目には他の将たちが頼りなく映っているのか?お前が居ない秦軍では、国を守れないと…そう思っているのか?」

信は今までも自分の力を過信しているつもりはなかった。それに、他の将たちの力は何度も同じ戦場に立っていた信もよく知っている。

どうやら王賁には、信が自分たちの力を信頼しておらず、一刻も早く戦場に戻らなくてはと焦っているように見えたらしい。

「ううん」

信は泣き笑いのような顔で首を横に振った。

「…みんなのこと、信頼してるに決まってるだろ」

どうやら信の返答を分かっていたかのように、王賁がふっと唇を緩める。

「ならば、何も気にすることはない。今のお前の役割は、無事に子を産むことだ」

優しく頭を撫でられて、信は照れ笑いを浮かべながら頷いた。

日頃から鍛錬を欠かさないマメだらけである王賁の手を掴み、信は自分の手と絡ませる。

信と夫婦となってから、些細に身を寄せ合うことが当たり前となっていた。

幼馴染という関係で結ばれていた時にはこんな日が来るなんてお互いに想像もしていなかったが、今ではお互いの存在がない日常なんて考えられないほど、二人は想いを寄せ合っている。

「…へへっ」

自分の手を握りながら、はにかむ信を見て、王賁の胸が早鐘を打つ。もう何度も愛しいと感じているはずなのに、愛という感情には底がない。

褥の中で身を寄せ合っていたのだが、信は自分の太腿に何か硬いものが押し当てられたことに気が付いた。

「ん?」

何だろうと顔を下に向けて、その正体が分かると、信の顔に火が灯ったかのように赤くなる。王賁があからさまに目を泳がせた。

「あっ、えっ!?えっと…?」

どうしたらいいのか分からないという顔で、信が着物を押し上げている男根と王賁の顔を交互に視線を送る。

王賁に破瓜を捧げるまで信は一度も男との経験がなかった。想いが通じ合ってから婚姻を結ぶまではそう長くかからなかったが、信の妊娠が分かってからは、腹の子に負担を掛けたくないという王賁の気遣いもあり、二人は体を重ねていない。

未だ情事に経験が乏しい信はこんな時、どうしたら良いのか知識がなく、狼狽えることしか出来ない。

放っておけと言わんばかりに王賁が目を伏せたので、信はますます困惑する。

初めて身を繋げた時の王賁の表情を覚えており、勃起した状態で何も出来ないのは苦痛でしかないことを、経験が少ないながらに信は知っていた。

さすがに身籠った身体では以前のように激しく情事は不可能だが、王賁が苦しんでいるのだから、何とか出来ないだろうかと模索する。

 

情交

目を閉じている王賁の足の間に腕を伸ばし、信は彼の着物越しに男根を手で擦った。

「ッ…」

びくりと体を震わせた王賁が驚いたように、目を見開く。何をしているのだという視線を向けられたのは分かったが、信は俯きながら、着物越しに男根を手で擦り続けた。

悶えるような、小さな呻き声が聞こえて、信は弾かれたように男根から手を放す。

「わ、悪い…」

顔を見ていなかったせいで、嫌悪の声だと思ったのだ。しかし、王賁は咎めるようなことはしない。何も話さず、ずっと目を伏せている王賁を見て、もしかして続けて欲しいのだろうかと考える。

言葉に出すのは恥ずかしかったので、王賁の顔を眺めながら、信は再び男根に手を伸ばした。

「っ…」

掌で優しく包み込むようにすると、王賁の瞼が僅かに震える。

僅かに吐息が聞こえて顔を上げると、切なげに眉根を寄せていた。しかし、止める気配がないことから、嫌がっていないことを確認すると、信は着物の中に手を忍ばせて、屹立の根元に指を絡ませた。

五本の指で輪っかを作り、掌でゆるゆると扱いていくと、男根の漲りが増していく。浮き上がった血管が熱い脈動を打っていた。

(これで合ってんのかな…)

情事に豊富な経験がないので、このやり方でも男が満足するのかは分からなかったが、信は上目遣いで王賁の表情を確かめながら、手の動きを速めていった。

何が正解なのかは分からないが、王賁の呼吸が早まっていき、気持ち良さそうにしているのを見ればこのままで良さそうだ。

手の刺激を続けていると、鈴口から粘り気のある透明な液体が滲んで来たので、信が目を見張る。

親指の腹で鈴口を擦って、先走りの液を掬い取る。王賁がぐっと奥歯を食い縛ったのが分かり、信は続けざまに指の腹で鈴口を刺激した。

戦場で見せることのない顔を自分にだけ見せてくれているのだと思うと、信の胸に優越感が宿る。

「王賁…」

名前を呼ぶと、眉根を寄せていた王賁の表情がさらに強張ったのが分かった。

手の中にある男根が今すぐにでも弾けてしまいそうなほど脈動を打っている。しかし、手だけの刺激では足りないのではないだろうかと思った信は腹を気遣いながらゆっくりと身を起こし、王賁の体に跨った。

「信ッ…?」

何をしているのだと王賁が問うよりも先に、信は頭を屈めて、男根をその口に咥え込んだ。

「―――ッ…!」

咥え切れない根元は指先を絡ませ、しっとりと唾液を纏った水気の多い舌で亀頭を這い回ると、王賁が息を詰まらせた。

初めて体を重ねた時に、先端を責められるのが弱いことは分かっていたので、信は得意気に口淫を続ける。

「ん、む…」

唾液ごと、亀頭をちゅうと吸い立てれば王賁が喉を引き攣らせ、内腿を震わせた。もう限界が近いのは王賁も信も分かっていた。

「信、もうよせ…」

このままでは口の中で果ててしまうと王賁が信の肩を掴む。しかし、信は聞こえないフリをして口の中での射精を促した。

頭を動かして、男根を深く口の中に咥え込む。

「ん、ッ…」

生々しい水音を立てながら、唇を滑らせていくと、下腹部を震わせながら王賁が呻き声を上げた。

「ふ…ぅ…」

やがて口の中で熱い何かが溢れ出る。唇と口内で男根が打ち震えるのを、信は目を伏せながら感じていた。

舌の上に粘り気のある苦くて熱いそれが広がっていき、信は瞼を持ち上げた。

「……んぅ、ぅ…」

男根を咥えたまま、どうしたら良いのか分からず、信は戸惑ったように王賁を見上げる。

絶頂の余韻に肩で息をしながら、王賁がばつの悪そうな顔を浮かべた。

「吐き出せ」

男根を信の口から引き抜くと、未だ彼女の口の中に残っている精液を吐かせようとする。しかし、信は首を横に振った。

「信っ」

涙目のまま喉を動かした信が、まるでいたずらを咎められた少女のような顔をして、ぎこちなく笑う。

「吐き出せと言っただろう」

彼女の唇に残っている残渣を指で拭いながら、王賁が叱りつけるように言った。しかし、言葉とは裏腹に、信へ向けている眼差しは優しい。

「よく分からねえけど…男って、我慢したら辛いんだろ?」

顔ごと目を背けた王賁に、信は苦笑を隠せなかった。

「…王賁」

両腕を伸ばして、信は王賁に抱き着いた。いきなり抱き着いて来た彼女に驚いたように、王賁が目を見張る。腹を圧迫しないように気遣いながら、彼も背中に腕を回してくれた。

表情に出さずとも、こういう分かりやすい態度はどことなく自分と似ているなと、信ははにかんだ。

 

王賁×信のバッドエンド話はこちら