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毒杯を交わそう(李牧×信)後編

キングダム 毒杯を交わそう2 牧信
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  • ※信の設定が特殊です。
  • 女体化・王騎と摎の娘・めちゃ強・将軍ポジション(飛信軍)になってます。
  • 一人称や口調は変わらずですが、年齢とかその辺は都合の良いように合わせてます。
  • 李牧×信/桓騎×信/毒耐性/シリアス/IF話/All rights reserved.

苦手な方は閲覧をお控え下さい。

このお話は毒酒で乾杯を(桓騎×信)の番外編です。

前編はこちら

 

悪戯

濡れてしまった着物を掴みながら、李牧は信の耳元に唇を寄せた。

「信、そのままでは風邪を引いてしまいますよ」

「~~~ッ!」

わざと吐息を吹き掛けるように低い声で囁くと、信の身体が震え始める。ぎゅうっと体を縮めた彼女を見て、李牧の笑みは止まらない。

体調を気遣う名目から、目的が悪戯にすり替わっていた。

先ほどのように自分を睨みつけたり、手を振り払ったりする様子もないことから、信にはもう微塵も余裕がないことが分かる。

全身が性感帯になったとでもいうのか、どこに触れても、弱い刺激だけでも、彼女は体をいちいち反応させていた。

こんなに愛らしい反応を見せつけられれば、何もしない方がおかしいだろう。

執拗に李牧から離れようとしていたのは、きっとこのせいだったのだ。二人きりでいるところを疑われたくないのではなく、自分の体質を分かってのことだったに違いない。

「触んなっ…」

帯を解こうとする李牧の手を掴み、信は真っ赤な顔で睨んで来る。

そのような目線を向けられれば、もっとしてやりたくなるという男の汚い欲を、どうやら彼女は知らないらしい。

信の身体を組み敷くと、怯えた視線を向けられた。しかし、瞳には情欲の色がはっきりと浮かんでいる。

必死に抗っているとはいえ、一度火が付いた情欲はそう簡単には鎮火出来ないものだ。毒の副作用とでもいうのなら、なおさらのことである。

「は、ぅ…」

身を屈めて、李牧が信の白い喉に唇を寄せると、彼女は甘い吐息を零した。

まだ抵抗する意志が残っているのか、両手で李牧の身体を突き放そうとして来たが、少しも力が入っていない。見方によっては男を誘っているようにも見える。

「せっかく同盟を結んだのですから、何かおめでたい話題の一つでも持ち帰りたいものですね」

「…っ…?」

肩で息をしている信には、李牧の言葉の意味が伝わっていないようだった。もう冷静に思考を巡らせることも出来ないらしい。

「やっ…」

美しい装飾を施されている帯を解くと、信が焦った表情を浮かべる。

力の入らない手で襟合わせを掴んで、肌を隠そうとするが、その手を振り払うのは簡単だった。

まるで果実の皮を剥くようにして着物を脱がせていくと、彼女の肌が露わになる。

普段は着物と鎧で覆われている肌は白く、多くの戦を生き抜いて来た証でもある傷がたくさん刻まれている肌ではあったが、若さゆえに艶もある。

「信…」

紅に彩れた瑞々しい唇を貪り付きたかったが、彼女への口づけは毒を食らうことになる。

毒の味に興味があるのは事実だし、接吻で死ねるというのもなかなか耽美な夢を見せてくれそうではあるのだが、まだ死ぬわけにはいかなかった。

代わりに、李牧は彼女の額や頬に唇を落とした。

「ん、やっ、あ…」

唇の感触だけでも堪らないといったように、信が切なげに眉根を寄せていた。

その反応を楽しみながら、李牧は身を屈めて今度は首筋に口づけを落としていく。

「ふ、ぁあっ…」

ちゅうと音を立てて白い肌に吸い付けば、信が喉を突き出しながら、甘い声を洩らした。

艶のある肌と比例するように、美しい形と量感のある胸を手で包み込む。柔らかさを手の平いっぱいに味わっていると、信が膝を擦り合わせていた。

父の仇同然である男にこのようなことをされて、恥じらってはいるものの、その顔からは欲情を隠し切れていない。言葉にしないだけで、もっとして欲しいと全身が訴えていた。

「ん、やぁっ…」

胸の突起を軽く摘まむと、切ない声が上がった。

甘い声を聞いている内に、興奮で指に力が入ってしまう。突起を指の腹で押し潰したり、強く引っ張ると、信は幼子のように首を振って泣きそうな声を上げていた。

信と違って、李牧は少しも酒を飲んでいないというのに、まるで全身に酔いが回っているかのように心臓が早鐘を打っている。

きっと目の前にある毒酒に充てられたのだと李牧は思った。

左手で胸を揉みしだき、右の胸に唇を寄せる。上向いた突起を口に含むと、信の体が仰け反った。

「んあぁっ」

感度が上がっているせいだろう、いちいち反応が愛らしくて、もっと泣かせてやりたくなる。

痛いくらいに男根が勃起しており、李牧は目の前の少女に興奮を覚えている自分に気づいた。

 

悪意

足の間に指を差し込むと、彼女の其処は既に蜜で塗れていた。湿り気のある熱気も共に指先から伝わって来る。

「ひっ、ぃ」

触れるだけで信の身体が大きく跳ね上がった。

「やっ、ぁあ」

蜜の滑りを利用して、指を押し進めていくと、簡単に根元まで呑み込んだ。最奥にある柔らかい肉壁を突くと、信の体が小刻みに震え出す。

中で指を折り曲げたり、悪戯に最奥を突くと、蜜がどんどん溢れ出して来て、あっという間に李牧の手を濡らしていった。

「ぁあっ、やめ、ろっ、抜けってば、ぁ…!」

まさかまだ理性があるのかと李牧は驚いたが、体は既に性の快楽に堕ちている。ここに男が欲しくて堪らないのだろう。

ぐずぐずに蜜で濡れたそこが差し込んでいる指を締め付けて来たので、李牧は笑ってしまった。

「本当に抜いて欲しいのですか?離してくれないのはあなたの方ですよ」

「ぅう…」

信は泣きそうな声を上げて理性と欲望と戦っているようで、首を横に振るばかりだ。本当は欲しくて堪らないくせに、言葉にはしない。

このまま弱い刺激だけを与えていき、限界まで追いつめて信の口から強請るような言葉を言わせるのも一興ではあったが、今の李牧にはそこまでの余裕は持ち合わせていなかった。

「んんぅッ」

強引に指を引き抜くと、その刺激だけでも感じるのか、信の体が大きく跳ねる。

同じ空間で肌を合わせているだけだというのに、こんな淫らな姿を見せられて平常心でいられる男などいない。

前を寛いで勃起し切っている男根が露わにすると、信が瞠目した。

「やッ、やめ…」

力の入らない両手で李牧の体を押し退けようとするが、そんな僅かな抵抗も今となっては男をそそる材料でしかない。

膝裏に手を回して両脚を大きく開かせると、信が身を捩って逃げようとする。

細腰を掴んでその体を引き戻し、花襞を掻き分けて、今も蜜を零している淫華に男根の先端を擦り付ける。蜜と先走りの液が混ざりあって、卑猥な水音が立った。

今からこれが入るのだと教え込むように、男根の先端を入り口に擦り付けると、信の内腿がびくびくと震えた。

態度では嫌がっているように見せても、昂っている体は早く欲しいと男を求めている。

まるで奥へ誘い込むかのように、入り口が打ち震えているのを感じて李牧は苦笑を浮かべた。

「挿れますよ」

「あっ、やだッ、やぁああッ」

前に腰を推し進めると、信が悲鳴に近い声を上げた。

中は狭いが奥までよく濡れており、男根をすんなりと受け入れた。指で慣らしもせずに挿れたというのに、まるで待ち望んでいたかのように李牧のことを迎え入れていた。

互いの性器を馴染ませるように、李牧は奥まで腰を進めた後は動かずに信の体を強く抱き締める。

挿入したばかりだというのに、信の淫華は男根をきつく締め付けて離さない。

彼女の反応や年齢からして、男との経験があったのは分かっていたが、まるで生娘処女のような締め付けの良さだった。

「ッ…!」

あまりの気持ち良さに思わず喉が引き攣る。

もちろん李牧とて女との経験はあったが、男根を挿入しただけでこんなにも具合が良いと感じる淫華には過去に一度も出会ったことがなかった。

「ぅううっ…抜けよッ…!」

敷布を掴んで、信は泣きながら逃げようとする。この期に及んでまだ逃げられると思っているらしい。

潤んだ瞳で見つめられると、それだけで男の情欲が掻き立てられる。この女が快楽に悶え、蕩けていく様を見てみたい。

口の端がつり上げた李牧は信の腰を抱え直すと、その体を突き上げ始めた。

李牧が腰を動かす度に、性器と性器が擦れ合ってぐちゅりと粘り気のある音が響く。

「~~~ッ!」

鼓膜を揺する音にさえ感じているのか、信は幼子が駄々を捏ねるように首を振っている。

突き上げる度に、ますます蜜が溢れていき、彼女の中はまるで意志を持った生き物のように李牧の男根をきつく締め上げた。

眩暈がしそうになるほどの快楽に襲われ、李牧は息を切らしながら夢中で腰を揺する。

「はあッ…信ッ…」

初めて女を抱いた時のような、未知の快感を知った興奮に近かった。それだけ信の中は具合が良い。

「ぃやあッ、ぁああッ」

互いの汗ばんでいる肌を擦り合わせるようにして、信の中を穿つ。

恍惚な表情を浮かべている信に唇を重ねようとして、それが叶わないことを思い出す。

しかし、このまま深く身を結んだまま、彼女から毒を受けて死んでも良いとさえ思えた。

「信ッ…」

快楽に飲み込まれそうになる理性を必死に繋ぎ止めた。

大きく開かせていた彼女の足を掴み、体を横向きにさせる。李牧も寝台の上に寝そべり、彼女の体を後ろから抱き込んだ。

背後から信の体を抱き込みながら、李牧はゆっくりと腰を突き上げ始める。

「ぁああッ」

先ほどの正常位より密着感が増したせいか、信の声が高くなる。

(これは…)

信の背中には赤い痣が幾つも刻まれていた。それが男の唇によって刻まれた痕だというのはすぐに分かった。

薄くなっているものから、最近つけられたと思われる濃いものまである。この女は自分のものだという印を刻み付けた独占欲の表れに見える。複数の男ではなく、一人の男のによってつけられたものに違いない。

「あっ…やあッ…」

痣を指でなぞると、くすぐったいのか、信が身を捩る。

これだけの数を刻み、そして消え去らないように幾度も重ねて痕をつけていることから、信を抱いた男は独占欲がよほど強いのだろう。

首筋ではなく、肌が隠れる着物の下につけているのは、人目につかない場所にしてくれと信に懇願されたからなのだろうか。

腰の辺りにも指の痕がある。信の細腰を掴んで揺さぶった何よりの証拠だ。

今この体を好きに扱っているのは自分だというのに、他の男の痕を見せつけられたかのようで、李牧の胸に嫉妬の感情が渦巻く。

「ひゃあぅ」

引き締まった太腿を持ち上げながら律動を送ってやると、信が高い声を上げて身を捩った。

背中を向けていて、表情は少しも見えないのに、その悩ましい声だけで信がいかに淫らな顔をしているのかが分かった。

「ッ…!」

息を止めて、深く、力強く、男根を抽挿した。

肌がぶつかり合う激しい打擲音が、信の喘ぎ声と共に部屋に響き渡る。

「信ッ…信…!」

口づけが出来ない代わりに、李牧は彼女の項に思い切り噛みついた。

「あっ、ぅあ…」

血が滲むほど強く噛みついたというのに、その痛みさえ快楽に変換されてしまっているのか、信は甘い声を上げていた。

背後から手を伸ばし、淫華に触れる。自分の男根を口いっぱいに咥え込んでいる縁を指でなぞると、彼女と一つになっているのだという実感が湧いた。

「やあッ」

繋がっている部分から指を滑らせて、ぷっくりと充血している花芯に触れると、信の体が仰け反った。官能をつかさどるそこは、情事中は女の急所となる。

「や、やめ、ろッ、やだあッ」

喜悦に声を震わせている彼女に苦笑を浮かべながら、李牧は腰を動かしながら、指で花芯を弄った。後ろと前を同時に刺激責められて、信は泣きそうな声を上げる。

ただでさえ男根を強く締め付けているというのに、より男根を締め付けられ、李牧は生唾を飲んだ。

少しでも気を抜けば簡単に吐精してしまいそうになる。それだけ信の中は男を夢中にさせるものだった。

「ぅああっ」

信の項に何度も歯を立てたり、赤い痣をつけながら、李牧は律動を送る。

この腕の中にある体を、初めて女にしたのは誰なのだろう。信の背中に刻まれている赤い痣を眺めながら、李牧は嫉妬の感情をますます膨らませていった。

 

最悪の目覚め(桓騎×信)

窓から差し込む朝陽に目を覚ますと、李牧は隣にいなかった。

もしかしたら昨夜の情事は夢だったのだろうかと眠たい目を擦りながら、信はゆっくりと上体を起こす。気分は最悪だった。

「はあ…」

酒と毒はすっかり抜けたようだが、頭がずきずきと痛むのは間違いなく二日酔いのせいだろう。

傍にある水差しで水を飲み、信はふらつきながら、立ち上がろうとした。

「う…」

床に足をつけた途端、粘り気のあるどろりとした何かが足の間から溢れるのを感じて、信は顔をしかめた。

足を伝っていく白いそれが男の子種であることを思い出す。信は李牧との一夜が、夢でなかったことを嫌でも理解した。

一人で鴆酒一瓶空けるのはさすがに飲み過ぎだった。いつも恋人と二人で一瓶を空にしているから、昨夜は倍量飲んだことになる。

(…最悪だ…)

毒を摂取し過ぎることによる自分の特殊な体質については理解していたのだが、よりにもよって、父の仇同然である男に身体を許してしまった。失態に反吐が出そうになる。

まさか宴の場で、恋人がいつも酒蔵から仕入れている鴆酒が出て来るとは思わず、咄嗟に奪ってしまったのだが、その行為自体に信は後悔していない。

呂不韋の身勝手な行動でこれ以上、秦国が卑怯者の集まりだと思われることが許せなかった。呂不韋が指示をしたとしても、最終的には秦王である嬴政の品格を問われることになるからだ。

「はあ…」

もらい湯をしたら、すぐに屋敷へ帰ろう。恋人にこんなことを知られる訳にはいかなかった。

ただでさえは嫉妬深いのだから、もし昨夜のことに気付かれたらどんなことをされるか分からない。

も昨夜は宴に参加していたと思うのだが、趙の一行がいたせいか声を掛けてくれなかった。

まだ宮中にいるかもしれないと思ったが、つまらないと感じたならば早々に屋敷に帰る男だ。もしかしたら昨夜のうちに帰宅して、屋敷で飲み直しているのかもしれない。

恋人の存在がありながら、李牧とまぐわってしまったこともあり、とても合わせる顔がなかった。

壁に手をつきながら、ふらふらと歩く。

情けないほど下半身が言うことを聞いてくれないのは、昨夜の情事がいかに激しかったかを知らしめているようだ。

「…?」

扉を開けると、朝のはずなのに暗い影が信を包み込む。

窓から差し込む朝陽は眩しかったはずだが、急に天気が悪くなって来たのだろうかと思い、信は顔を上げた。

「よォ、お目覚めか」

「へ…?」

毒酒を飲み交わす唯一の仲間であり、恋人である桓騎が腕を組んで、信のことを見下ろしていた。

ここは宮廷だというのに、まるで戦場で感じるような殺気交じりの鋭い眼差しを向けられていて、信は逃げ出すことも忘れて硬直してしまう。

「な、なんで…?」

喉から絞り出した信の掠れた声に、桓騎がふっと口元を緩めた。

彼のこんなに穏やかな笑みは信にしか見せない表情の一つなのだが、今の信にとっては恐ろしい予感しかしない。

「人前で毒酒は飲むなって、あれほど言ったよなァ?」

「い、いや、あの…これは…」

一歩桓騎が前に出ると、信は反射的に後ろに下がる。

昨夜中、ずっと李牧と共に過ごしていた室内は、誤魔化しようのない情事の痕跡が残っていた。男と女の発情の芳香は隠し切れていないし、何より、信自身の体にも情事の痕が残っている。

着物で隠せない首筋にも赤い痕がいくつも刻まれていることに、信本人は気づいていなかった。

「毒酒を飲み過ぎると、自分がどうなるか分かってて飲んだってことで良いんだよな?」

鴆酒に限らず、毒物を多量に摂取すると、毒に耐性のある信の体は一時的に媚薬を飲まされたかのように性欲と感度が増強する。

それを信自身も分かっていながら、自分以外の男にその姿を曝したことが桓騎には許せなかった。

どんな過程があり、上手い言い訳をされたとしても、信が自分以外の男と身を重ねたのは紛れもない事実だ。これはきつい仕置きをしただけで済む話ではない。

「ひっ…」

唯一の出口である扉を後ろ手で乱暴に閉められて、信は顔から血の気を引かせる。これから昨夜のことを咎められるのだと嫌でも察したのだった。

既に足腰は使い物にならなくなっているというのに、こんな状態で襲われれば一体どうなってしまうのだろう。

桓騎が嫉妬深い男であることを、信はよく知っていた。だからこそ彼に気付かれてはいけないと分かっていたのに。

「あ、あの、ご、ごめ…」

涙目で信が謝罪を言いかけた時には既に、彼女の体は桓騎によって寝台に押し倒されていた。

「許さねえぞ」

顔を見なくても、耳元で囁かれたその声だけで、桓騎が憤怒していることは明らかだった。

 

桓騎×信の本編はこちら

 

政略結婚

趙へと戻るために、李牧は出立の準備を整えていた。

早く帰りたいと願っていたはずなのに、いざ帰還するとなると、これからのことで頭が痛くなる。

秦趙同盟の報告や、韓皋の城を明け渡す準備、不在にしていた時の他国の動き、さまざまなことが李牧の脳裏を過ぎった。

「宰相殿」

馬車へ乗り込もうとした時、できれば聞きたくなかった声に呼ばれ、李牧は咄嗟に笑みを繕って振り返る。

「これは丞相殿。お見送りに来てくださったのですか」

供手礼をすると、呂不韋は昨夜の宴のせいか、顔にやや疲労を浮かべていたが、笑みを返した。春平君一人を人質に取ったことで韓皋の城を手に入れたことがさぞ嬉しいのだろう。昨夜は遅くまで宴を楽しんでいたに違いない。

「お帰りの前に、一つだけ頼み事をしてもよろしいかな?」

おまけ・・・はもうお付けできませんよ」

韓皋の城を明け渡すことになったことを皮肉交じりにそう言えば、呂不韋は豪快に笑いながら首を横に振った。

「飛信軍の信という娘だ。いやあ、昨夜はあの娘が随分と無礼を致した」

口元に下衆な笑みを浮かべたことに、李牧は肩を竦めるようにして笑った。

鴆酒を飲ませようとしたのは呂不韋の企みだったはずだが、李牧を庇った信にその罪を擦り付けようとするかのような言葉に、さすがに気分が悪くなる。

「その後、あの娘からもてなしを受けたようで?」

彼の口ぶりから察するに、呂不韋は李牧が信と夜を共に過ごしたことを知ったのだろう。

李牧が返事をせずに微笑んでいると、

「…王騎の娘であり、数多くの武功を挙げているのだが、あの娘はどうも嫁に行くつもりがないようでのう。昨夜のように着飾れば、見目は悪くないと思うのだが、あのように男に靡かぬ性格が何とも…」

長い髭を片手で整えながら、呂不韋は天気の話題でもするかのようにそう言った。

自分でない男に信のことを話されると妙な苛立ちが沸き起こる。昨夜、体を交えたせいで独占欲を抱いてしまったのかもしれない。

だが、ここで不自然に話を切り上げる訳にもいかなかった。逃げたと思われるのは癪だ。

「そういえば、宰相殿も未だ妻子が居らぬのだとか?」

「ええ、まあ」

李牧は言葉を濁らせた。何を言わんとしているのかが手に取るように分かり、苦笑が滲んでしまう。

「それでは」

ぽん、と手を打った呂不韋が満面の笑みを浮かべた。しかし、それは商人としての顔であることを李牧はいち早く見抜いたのだった。

「秦趙同盟を結んだ暁に、あの娘を嫁にもらってやってはくれんか?亡き両親も可愛い娘がいつまでも独り身では気がかりであろう」

「それは嬉しいご提案ですね」

口元に浮かべた笑みは作り上げたものだったが、発した言葉は本心だった。

あの娘を気に入ったのは事実だし、縛り上げてでも連れ帰りたいと李牧が昨夜考えていたのも事実だ。

明るい返答を聞き、呂不韋はますます楽しそうに目を細めた。

「趙の宰相殿がお相手なのだ。こちらも咎める者など居ないだろうて」

信は六大将軍である王騎と摎の養子だが、王騎も摎ももういない。王家の一員ではあるものの、二人という後ろ盾がないことを呂不韋は良いように利用したのだ。

「…昨夜もそのように手配をして・・・・・・・・・・・・・くださったようですから、ありがたくお受けいたします」

どうやらこちらが何を言わんとしているのか、呂不韋も察したようで、彼の商人としての顔がますます深まる。

あの後、宴の間に自分と信が戻って来なかったことは呂不韋も気づいていたに違いない。

二人で同じ客間にいたことから、自分と信がそういう仲であると誤解してくれたらしい。だからこそこの話を持ち掛けたのだ。

「………」

こちらの言葉を聞いた呂不韋が何も言わずに微笑んだので、恐らく信の毒が効かない体質を知っていたのだろう。鴆酒を飲み過ぎるとああなることも・・・・・・・、事前に情報を得ていたのかもしれない。

李牧が鴆酒を飲んだとしても、信がそれを庇ってくれたとしても、きっと呂不韋にとってはどちらでも良かったのだ。

鴆酒を飲んだ時に信と交わしていた言葉も、今となってはわざとらしい演技であったということである。

しかし、呂不韋は新たな交渉に目を光らせていた。

「いやあ、これはめでたい。お二人という存在が秦趙を繋ぐ架け橋になるだろう」

此度の同盟が解消されたとしても、結んだ婚姻が解消されることはない。

信の存在は秦には欠かせない戦力だというのに、なぜ趙に売るような真似をするのだろうか。

強い意志が秘められた呂不韋の双眸を見据えながら、恐らくこの男にとって信は邪魔な存在なのだと李牧は思った。

事実、信も呂不韋のことを毛嫌いしていたし、丞相である呂不韋を少しも信頼していないのはあの態度を見て明らかだった。

信が厚い忠義を向けているのは嬴政だけであり、そして呂不韋が秦王の座を狙って目を光らせていることも、李牧には分かっていた。

恐らく、嬴政にとって強靭な剣である信の存在を遠ざければ、秦王の座を奪い取れると見て趙の宰相である李牧との婚姻を提案したのだろう。

嬴政に厚い忠義を持つ信がそれを拒絶するのは目に見えているが、将軍の立場では丞相の命令には背けない。

そして今の秦王には呂不韋の命令を退けるような力がないことを、李牧はあの交渉の場で察していた。

「…秦の丞相殿が仲人を担ってくれるだなんて、ありがたいですね。そのお話、喜んでお受けいたします」

「お任せあれ。おまけをつけてくれたせめてもの礼じゃ」

上手いことを言うものだ。しかし、李牧は純粋に信との婚姻を喜ばしく感じていた。

そこに信の意志も心もないのだと分かっていながら、彼女を傍におくことが出来るのならば、これほど嬉しいことはない。

趙の宰相である李牧と婚姻を結べば、信は秦将として二度と戦に立つことは出来なくなる。同盟をより強固にさせるために離縁は決して許されないし、早々に子を孕ませてしまえばいい。

李牧は呂不韋の企みをもう一つ見抜いていた。

ここで自分に恩を売っておけば、李牧がいる趙に逃げ道を作ることができると呂不韋は考えたのだろう。

秦王の座を狙いつつも、国が危うくなれば容易に見捨てることも厭わない忠義のなさに、李牧は本当に食えない男だと思った。

(まあ、今はいいでしょう)

呂不韋は気に食わないが、信との婚姻を進めてくれるのならば利用するまでである。こちらとて、いつまでも黙って利用されてやるつもりはないのだから。

「では、祝宴は両国を挙げて盛大に行いましょうぞ」

「ええ、今から楽しみで仕方がありません」

趙の宰相と、秦の丞相が穏やかな笑みを浮かべていたが、辺りにはたちまち重い空気が纏わりついていた。まるで肺に鉛のような毒を流されたかのような気分だ。

昨夜、信を抱いたことで、自分も彼女という毒に侵された。もしかしたら自分にも毒の耐性が出来たかもしれない。

本当にそうだとすれば、今度こそ唇を重ね、いずれは夫婦で毒酒の味を分かち合いたいものだと、李牧は笑みを浮かべるのだった。

 

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